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小説家になろう - 異世界から帰ったら江戸なのである - 94話『とある薩摩の禁止演目』
『
(中略)
「書き物が規制されたようだね」
「うん」
「よくやった」
「えええ」
まさかの褒め言葉に雨次は呻いた。
天爵堂は目を細めながら、
「物書きはね、規制されてなんぼのものだよ。僕だって何冊も版木ごと燃やされているんだ。登竜門さ」
「そういうものかなあ」
(中略)
「ともあれ、後世から見たときに歴史の中で、文化が豊かな時代に於ける出版物の目安がなんだか分かるかい?」
「ええと……たくさん色んな種類が出ている、とか?」
雨次の答えに顔を顰める。望んだ答えではないようだ。
「その時の政治を批判している本や瓦版がどれだけ残っているか、だよ」
天爵堂の考えに雨次は目を丸くした。
「爺さん、それ悪いんじゃないのか? 悪口の記録が残っているって」
「とんでもない。いいかい? どれだけ政治が優れていようが、万人が万人すべて満足する社会なんてあり得ない。必ず少数の不満を持つ者が居るんだ。その意見を黙殺する社会は、大多数が幸福だろうが文化としては下だ」
「……」
「逆にいかに民衆から酷く罵られて批判文が出回ろうが、それを規制しない政治家は後世で評価されるものだよ。人気を取るよりやるべきことを優先し、批判の矛先を自分で受けて弾圧はしなかったんだ。どこかの誰かみたいに、一般民衆にまで貧しさを強制したりはしないはずさ」
(中略)
真面目な声音で云う。
「信念がある文を書きなさい。誰に認められなかろうが、自分の正しさを信じて文章を書いている限り、物書きと云うものは不幸ではない」
』
※8月のあいだじゅう、↑に読み浸っておって(=この支配からの卒ぎょいや現実からの逃避文学)のう、書籍版も買うてしもうた。
※ちなみにいまは読むの二周目なんじゃよー