関心空間の糞袋

関心空間から移行した内容(当時の不完全な記録)

銘機礼讃 田中長徳

青年期に影響を受けた本、その1。

小学生からのカメラ好きである。証拠は、弟と一緒にデパートのカメラショーに行き、その時もらったカメラショーのカタログを手元に残しており、それには「’80日本カメラショー」と題がついているからである。自分の学習机のビニールマットの下には、某所で入手したペンタックスME、40ミリレンズ付の、カタログから切り抜かれたのが学習中にも見えるナイスな位置に敷いてあった。病は高じて、中学生になる2、3年前にはクラシックカメラ関係のムック本を手にしていたが、その直後にクルマやバイクに憧れるようになりメインの書籍購入ジャンルがそちらに傾く。しかし高校生くらいには(順当な年功序列による不労所得の金額向上により)バランスよく両道を、いや音楽鑑賞の趣味も入ってきたから・・・・・・まあとにかくカメラ好き度もまた上がってきた。たぶんそのころ、バックナンバーも含めて購入したクラシックカメラ専科というビッグマイナー(スミマセン)なムック本に、田中長徳氏の文もあったと思う。そのときは「カメラの使い心地どうこうじゃなくて自分の話になってるけど、読みやすくて面白いなー」くらいな、ちょっと他の執筆者とは毛色が違うな、くらいの印象だった。

大学に入り手にしたこの本。・・・カメラ趣味をここまで「手の届きそうなくらいの高尚」なものとして扱えた人は他にいまい。カメラを紹介するのにひっつけた題材と、決してそのカメラを貶めない文章の切り口のお蔭だろう。そう、読んでいると自分まで趣味が良くなったような気がしてくるのだ。そして、多数のカメラ好きが乗っかった。

しかし、これは(いや、すべからく商品としての文章は)エンターテインメントなのである。「オマエがアレを褒めたからワシも買ったのにヒドイ代物だったぞ。騙したな」何をか言わむや!いい年して文句をいうな、顔色変えずに状況を楽しめ、タダでできる勉強など無いのだ。損得勘定を尊ぶ(?)者が趣味にうつつをぬかせることができるものかよ。あっ、そうかだから文句をいうのかぁ。

まあとにかく、私にとって良い夢を見させてくれる、今後も手放さないであろう、いい本である。

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